エッジコンピューティング調査 - アプリケーション

エッジコンピューティング調査 - 動機と分類 - ゆううきメモでは、下記のサーベイ論文を基にエッジコンピューティングの動機と、Fog Computing、Cloudlet、Mobile Edge Computing、Micro DataCenterの4分類についてメモした。 エッジコンピューティングが想定するアプリケーションについて、次のエッジコンピューティングに関するサーベイ論文をもとにメモしておく。

Applications

IoT

  • 現在は90億以上のデバイスが接続されており、将来的には500億のデバイスを超えると予想されている。
    • データを生成する事例
      • 大型ハドロン衝突型加速器(LHC)は、1億5000万個のセンサーから収集される、1日500EBのデータを利用しているが、99.999%のデータはフィルタされる。
      • Boeing 787は、1フライトあたり500GB以上のデータを生成する。
      • Googleの自動走行者は、秒間1GB近くのデータを生成する。
    • センサーノードは、リソース制約があるため、データ分析などcompute-intensiveなタスクを実行できない。
    • ほとんどのIoTデバイスは、処理、フィルタリング、データ格納のために、最近傍のエッジノードに頼ることを見越している。
  • スマートビルディングの制御にエッジコンピューティングが利用されている。
    • 気温、振動、湿度、ガスレベルなどを測定する多くの異種混合センサーが備え付けられている。
    • エッジデバイスは、建物の健康状態を収集し、意思決定する。例えば、気温を下げるために、新鮮な空気をインジェクトするなど。
    • リアルタイム動画処理と警告やドアロックにより、セキュリティが改善する。
    • 2015年には、250億ドル、2021年に750億ドルの市場になる。年間成長率は20.7%。
  • 大規模環境モニタリングシステムでは、ユーザーへのタイムリーなフィードバックのために、ローカルデータが収集され、fogノードで処理される。
    • 詳細な解析や計算量の多いタスクはリモートクラウドで処理する。

マルチメディア

  • Video
    • 2015年では、インターネットトラフィックの70%は動画であり、2020年には82%になるだろう。
    • 将来的には、IoTにより、 映像監視システム、視覚センサネットワークなどの多くのマルチメディアを生成するガジェットが、大量のデータを生成する。
    • 2014年に、Youtube LiveとTwitchは時間あたり1.5Tbpsの動画配信したと報告された。
    • 2014年のレポートでは、Akamaiは、グローバル回線帯域が平均4.5Mbps、59%のユーザーが4Mbpsの接続、13%と10%のユーザーがそれぞれ、10Mbpsかそれ以上、15Mbpsかそれ以上の接続があったと報告した。
    • 2016年には、平均帯域は、6.8Mbps、73%の接続が4Mbps、35%が10Mbps以上、21%が15Mbps以上、21%が25Mbps以上となった。
  • Video surveillance
    • 2013年には、UKでは、11人あたり監視カメラが1つあったと見積もられている。将来的には、大量のカメラとカメラからのストリームがインターネットへアップロードされる。
    • 複数のセンサーからの異種混合の情報、ターゲット追跡、環境アセスメントにより、様々なストリームからの情報抽出、分析と理解は、クラウドレベルのリソースが必要となる。
    • しかし、ミッションクリティカル、センシティブな監視、追跡システムには、エッジコンピューティングによるリアルタイム処理が必要となる。
  • Crowd-sourced video
    • 効率的にアップロードとダウンロードするために、ローカルのcloudletにcrowd-sourced videoを格納する提案。
    • 例えば、子供や犬が迷子になったら、ローカルのcloudletにある直近の動画をみて探す。
  • Wearable computing
    • congnitive assistanceを基にしたアプリケーションはリアルタイムな応答
    • 人間は、知らない人の顔への反応に、370ms - 620msかかる。
    • cloudletとGoogle glassを用いたcongtitive assistanceシステムのプロトタイプがある。
    • その他、フリーハンドスケッチや、2D レゴモデルの組み立てなどのcongnitive assistanceアプリケーションのアーキテクチャが提案されている。
  • Cloud gaming
    • クラウドゲームにおいて、ネットワーク帯域、遅延、ジッターがユーザーのQoEに大きく影響する。
    • cloudletを利用して、複数人プレイのゲームで、動画受信を共有し、帯域を最小化する提案がある。
      • ゲームサーバーはエンコードされた動画をアドホックなcloudletに送信し、cloudletが動画を接続中のプレイヤーの集団に送信する。
    • brain stateの分類は、重い計算が必要でかつ遅延に敏感なリアルタイムタスクである。
      • ヘッドセットとスマートフォンと、fogコンピューティングにより、脳をキャプチャし、fogサーバに送信する提案がある。 => online Brain Computer Interaction (BCI)
      • エンドユーザーの近くでは、fogサーバがデータストリームを処理し、クラウドでは、分類とキャリブレーションを実効する。

エネルギー効率

  • ICTは主要なエネルギー消費分野であり、2010年に、データセンターでのエネルギー消費が2710億 KWh以上と見積もられている。そのうち、ネットワークインフラは、156億 KWh のエネルギー消費。
  • ICTは、主要な温室効果ガス排出分野であり、グローバルなガス排出の約2%である。2020年には、クラウドDCにより、1034トンのガスが排出されると見積もられている。
  • cloudletにより、モバイルデバイス上で42%までのエネルギー消費を削減できることが示されている研究がある。
  • fogを利用したnanoサーバにおいて、同じアプリケーションを動かしたときに、fogのほうが効率的であると示されている研究がある。
  • Dynamic Energy-aware Cloudlet-based Mobole cloud computing
    • エネルギーとレイテンシの制約を踏まえつつ、リクエストのための動的コンピューティングを使い、t歴刹那クラウドのリソースを検索し、確保するためのwebサービスをcloudlet層で提案。
  • Green Cloudlet Network (GCN) アーキテクチャ
    • 遅延とエネルギー消費を最小化しつつ、cloudlet上でUser Equipment(UE)とソフトウェアクローン間のオフローディングを処理することが目的
    • データの完全性を守るために、SDNを利用し、Cloudlet Network File System(CNFS)を提案している。

スマートリビング

(出典: 当該論文のFig 9. Smart home using edge comouting)

(出典: 当該論文のFig 10. Smart grid using edge comouting)

  • センサーやコントローラー、アクチュエーターのようなスマートオブジェクト間での、コミュニケーション(遅延に敏感)とインタラクションは、スマートリビングやpervasive環境のすべてのドメインで共通であり重要。
  • スマートリビングの汎用的なfogモデルの研究 [102]
    • Fog Edge Node (FEN): スマートオブジェクト近傍にあるハードウェアコンポーネントスマートフォン、PC、AP、set top boxなど、1ホップ先に位置する。BluetoothZigBeeWi-Fiなどでアクセス。
    • Fog Server (FS): micro-data centerやcloudlet内に配置するfogインスタンス。パワフルな仮想サーバで構成され、FENクラウドの仲介を担う。
    • Foglet: 動的でスケーラブルなサービスのための、FENとFNにインストールされるミドルウェアプログラムエージェント。FENとFS間でセキュリティとプライバシーを確保する。FEN-FS間、FENクラウド間で、盗聴や情報漏洩を軽減する。
  • スマートグリッドは、スマートメーターとスマートアプライアンス再生可能エネルギー源、エネルギー効率の高い資源で構成される。
    • スマートグリッド上で動作するエネルギー負荷分散アプリケーションは、リアルタイム処理とactuation capabilitiesを必要とする。
    • グリッドセンサーが集めたデータは、エッジサーバで処理され、ローカルでフィルタリングされるか、可視化、レポーティング、網羅的な分析のために上位層へ送信される。
    • スマートメーターが備え付けられているUSAの世帯数は、2008年の6%から2012年の89%へ成長し、2019年には、家屋や小さなビジネスpフィスは、1900万のスマートメーターのもつと予想されている。
    • オースティン州では、50万のデバイスで、100TBのデータを収支していて、スマートメーターは15分ごとに電力使用量を更新する。
    • SmartLocalGrid (SLG)は、2つのマイクログリッド間のコミュニケーションのためのコンセプトであり、複数のデバイス間でコミュニケーションし、クラウドの支援なしで、ローカルでリアルタイムに意思決定する。
  • スマートリビングについての最近の提案は、(a) fogの導入 (b) マルチエージェントベースのアーキテクチャ (c) スマートシティのサービス間のデータ共有モデル (d) スマートな交通制御システム (e) スマートな電力分散のモデル

医療

  • エッジコンピューティングパラダイムは、eHealth careとスマートヘルスにおいて重要である。
  • クラウドベースのスマートヘルケアアプリケーションは、長い遅延と応答時間により、現実のユーザー体験は満足のいかないものになっている。
  • eHealthアプリケーションの最近の分析では、毎秒25,000タプルのヘルスデータが流れる。IoTやスマートシティの実現により、数100万タプルへ増加するだろう。
  • Fogコンピューティングやclodletベースのアーキテクチャで様々なヘルスアプリケーションの応答性の要求を満たすさまざまな研究がある。
  • エッジコンピューティングが重要となるアプリケーションのまとめ。
    • (a) 慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者のリアルタイム酸素モニタリング
    • (b) 軽めの痴呆に苦しむ患者のモニタリング
    • (c) 転倒検出と脳卒中の緩和アプリケーション
    • (d) Google glassを含むcongnitive assistanceシステム
    • (e) pervasibe 医療を基にしたボディエリアネットワーク(BANs)

コミュニケーション効率

  • 5Gは、4Gと比べて最小のレイテンシを目指す。5Gの標は次の3つである。
    • (a) あらゆるところでの接続
    • (b) ミリ秒のレイテンシ
    • (c) ギガビット接続
  • さまざまな5Gアプリケーションはクラウドのサポートを利用しているが、クラウドとのレイテンシが5Gが掲げる極端な低遅延の目的を達成する壁になっている。
  • Fog- Radio Access Networks (F-RAN): Cloud Radio Access Networks(CRAN)の欠点を解決する。無線リソース管理とローカル無線の信号処理、分散ストレージタスクのためのアーキテクチャ
  • 遠隔ロボット手術など、context-awareなシステムは、10ms以下のレスポンスタイムを要求しており、エッジ技術を含む5Gを使うことなしには不可能。
  • エッジコンピューティングがコミュニケーション効率を改善し、5Gネットワークのレイテンシを削減する
    • 既存の解決は、ユーザー要求とエッジサーバ上の負荷のバランスをとろうとしている。
    • エッジコンピューティングを用いた無線のリソース管理により、フロントホール部分の負担を削減し、結果として5Gネットワークのレイテンシを削減する

エッジコンピューティングに関するアプリケーション開発をやっていくことはあまりないかもしれないが、アプリケーションの処理モデルの想像がつかないと、OSやミドルウェアの層で問題を抽象化しきれないData-Intensiveな基盤の設計が難しいように思う。 そこで、クラウドのコンピューティング能力を持ちつつ、リアルタイム処理が必要なアプリケーションに具体的などのようなアプリケーションがあり、データ量の肌感覚をざっくりと知ることができた。 次は、アーキテクチャと評価、技術的挑戦についてまとめる。